経済産業省は12月2日に有識者会議(新エネルギー小委員会・系統ワーキンググループ=WG)を開催し、再生可能エネルギーに対する出力制御(出力抑制)の長期見通しなどについて討議した。
同WGでは、優先給電ルールの見直しに伴う、出力制御量への影響について、長期見通しの試算値が公表され、固定価格買取制度(FIT)案件への制御が増加する一方、フィード・イン・プレミアム(FIP)案件への制御が大幅に減少することが示された。
優先給電ルールの変更によって、再エネ電源に対する出力制御の順番は、これまでFIT電源とFIP電源を区別せずに、「バイオマス発電→太陽光・風力」という順番だったが、早ければ2026年度中に「バイオマス発電(FIT電源→FIP電源)→太陽光・風力(FIT電源→FIP電源)」という順番に変更することが決まっている。
こうした措置によって、FITからFIPへの転換を促すことで、再エネ増加に伴う電力系統への負荷を軽減する狙いがある。政府は、FIP電源に求められる発電予測と、蓄電池の併設をいっそう強力に支援するとしている。これらの支援策は、FIT・FIP認定案件の全体の約25%がFITに移行するまで集中的に行うとした。
今回、こうした政策の方向性を前提に、FIP比率が25%となった時点での出力制御量をエリアごとに試算した。その結果、エリアによって違いがあるものの、東京、中部、中国、四国エリアではFIP案件へ出力制御がほとんどなくなるという結果になった。また、もともと出力制御の多い北海道、東北、九州エリアではFIP案件の出力制御率が10ポイント以上減る一方、FIT案件では6~7ポイントも増えることが分かった。
具体的には、北海道エリアでは順番変更前における無制限無補償ルール案件の制御率が26%なのに対し、順番変更後はFIT・33%、FIP・4%になり、FIT案件が7ポイント増える一方、FIP案件は22ポイントも減少するとの試算値になった。
以下、東北エリアでは、変更前44%が変更後はFIT・53%、FIP・14%に。東京エリアでは変更前1%が変更後はFIT・1%、FIP・0.3%に。中部エリアでは変更前2%が変更後はFIT・3%、FIP・0.4%に。北陸エリアでは変更前5%が変更後はFIT・4%、FIP・4%に。関西エリアでは変更前4%が変更後はFIT・4%、FIP・1%に。中国エリアでは変更前7%が変更後はFIT・9%、FIP・0.3%に。四国エリアでは変更前6%が変更後はFIT・8%、FIP・0%に。九州エリアでは変更前20%が変更後はFIT・26%、FIP・4%に、となった(関連記事:TMEICが太陽光併設向け蓄電システム、空きスペースに合わせ柔軟な構成) 。
また、これまで出力制御の長期見通しについては、各エリアの一般送配電事業者(TSO)による試算値を公表してきたが、今回から連系線の活用について受電側エリアの受電可能量を考慮した統一ルールで試算した結果を公表した。それにより複数条件での試算が可能になり、需要対策、供給対策、系統対策を実施した場合の効果を公表した。
需要対策では各エリアの最低需要の10%分について蓄電池(6時間容量分)を導入したと仮定。供給対策では既存火力発電の最低出力を30%(火力)、50%(バイオマス)と仮定。系統対策では地域間連系線をマスタープラン通り増強したと仮定した。
これらの対策によって、風力発電の増加によって今後、出力制御が急増すると予測されている北海道と東北エリアについては、現状における出力制御率・長期見通しの北海道・26%、東北44%が、需要と供給対策によってそれぞれ3~6ポイント低下し、さらに系統対策によって北海道が17ポイント、東北が32ポイント低下するとの結果になった。