積水化学のペロブスカイト太陽電池が量産へ、福岡ドーム、都心高層ビルがメガソーラーに

積水化学工業によるペロブスカイト太陽電池の量産・製品化への取り組みが加速している。

 同社による研究開発は元々、事業化に近い水準に高まりつつあった。そこで2022年以降に公共性の高い屋外施設への設置計画が相次いで公表されていた。いずれも国内で代表的な地方自治体や企業などの施設である。

 ここに、ロシアによるウクライナ侵略や中国の軍事行動の活発化というエネルギー問題が加わった。世界的にエネルギーセキュリティ(安全保障)の重要性が高まってきた。そこで日本政府も同社のペロブスカイト太陽電池の量産と、国産電源としての早期普及を後押しする姿勢を強めている。こうした国内外の情勢が追い風となった。

 2023年10月には総理大臣官邸で開かれた会議で同社の加藤敬太社長が2025年の事業化を目指すことを表明し、経済産業大臣や副大臣による積水化学のペロブスカイト太陽電池の開発拠点などへの訪問も活発に続いている(関連ニュース)。

 屋外での検証では、2023年10月に同社の大阪本社が入居しているビルの外壁に同社のフィルム型ペロブスカイト太陽電池を設置した(図1、関連ニュース)。建物の外壁にフィルム型ペロブスカイト太陽電池が常設されるのは国内初となった。
現在のところ、このビルの外壁が最大規模の設置案件となっている。研究開発拠点で製造できる30cm幅のフィルム型ペロブスカイト太陽電池を3枚つなげて1m弱とした太陽光パネルを48枚(約48m)設置している。

 納入済みの中には、これ以上の規模となっている案件もある。「2025年 日本国際博覧会(大阪・関西万博)」向けである(図2、関連ニュース)。大阪本社が入居しているビル向けと同じ仕様のパネルが約250mにわたって設置される。これも公開が間近となっている。
フィルム型ペロブスカイト太陽電池は薄くて軽い。これは液状の材料を塗布して作った薄膜で構成されることによる。印刷のような技術で量産できる低コスト製造の可能性も期待される。

 また、結晶シリコン型に匹敵する変換効率の高さへの魅力がある。軽い上に、曲げや歪み(ゆがみ)に強い利点を生かした新たな応用分野への広がりが見込める。これが次世代の太陽電池のなかでも市場のゲームチェンジャーになり得るとして注目を集めてきた大きな理由である。

 建物の壁などは従来の結晶シリコン型では設置するのが難しい。ペロブスカイト太陽電池の軽くて形状の柔軟性が高いという利点を生かすことで、太陽光発電の新たな立地可能性が広がる。

 こうした可能性の一方、ペロブスカイト太陽電池は耐久性や長期信頼性が大きな課題だった。実験室でしか発電性能を発揮できないような太陽電池で、実際には製造している最中にも性能が劣化しているような状況だった。とても屋外で使えるレベルではなかった。