トイレ排水から「微生物燃料電池」で発電、栗田工業

栗田工業は、同社が開発を進めている「微生物燃料電池」について、実際の排水を対象とした実規模サイズのセル(単電池)による実証試験を11月に実施し、発電した電力で電気機器の連続稼働に成功した。12月19日に発表した。

 微生物燃料電池は、排水中の有機物を分解した際に電子を放出する能力を持つ微生物「発電菌」の働きにより、従来汚泥となっていた有機物を直接電気に変換する。排水処理に伴うエネルギー消費やCO2排出を削減できるほか、排水・廃棄物から電力を生み出し利用するエナジーハーベスティング(環境発電)用途が期待される。

 栗田工業は、2022年に排水を模して合成した液体を対象とした排水処理の実証実験において、微生物燃料電池セルの実規模サイズへのスケールアップに成功した。今回の実証試験では、エナジーハーベスティング用途での実用化に向け、実際の排水から得られる電気のみで電気機器の連続稼働を試みた。

 長崎県西海市のキャンプ場で、ニシム電子工業(福岡市)の協力のもと、し尿を浄化して水洗用水として循環利用できる自己処理型水洗トイレ「TOWAILET(トワイレ)」に、開発中の微生物燃料電池セルを組み合わせた。TOWAILETで処理されているトイレ排水の一部を微生物燃料電池セルに供給し発生させた電力で、それぞれ単三電池3本で動作するデジタル時計とLED計60個からなるイルミネーションを稼働した。

 その結果、試験期間を通じて、排水中の有機物除去量あたり0.6~0.8Wh/g COD Cr(化学的酸素要求量)の電気が得られ、これらの電気機器の連続稼働に成功した。また、発電セルの改良により、試験期間中のセル容量あたり発電量は最大550W/m3を記録し、2022年の実証実験と比較して2倍以上に向上した。

 栗田工業は今後、実証試験で確認された電気機器の連続稼働を踏まえ、災害時などの一般向け電源としての活用を模索する。また、工場などの排水処理用途でも実排水を対象とした長期実証試験などを通じて、さまざまな用途に向けた技術開発を進めていく。2030年頃の実用化を目指すという。