フレキシブル太陽電池の国内市場、2040年度449億円

    富士経済(東京都中央区)は、軽量・フレキシブル(柔軟)性を備えた太陽電池の国内市場の調査結果を発表した。それによると、2025年度の同市場は139億円となり、初めて100億円を超える見込み。2040年度は、2024年度比4.9倍の449億円と予測する。

 同調査は、フィルム型ペロブスカイト太陽電池5社(リコー、東芝、積水化学工業、アイシン、PXP)、軽量型結晶シリコン太陽電池3社(京セラ、Aiko Energy Japan=アイコエナジージャパン、電巧社)、有機薄膜太陽電池2社(MORESCO=モレスコ、東洋紡)を対象としたもの。調査期間は5〜7月。

 同市場では、樹脂基板を採用した軽量型結晶シリコン太陽電池の商用化が先行しており、建物への後付け可能な建物据え付け型太陽電池(BAPV)が産業施設や住宅屋根などに設置されている。従来のガラス基板による結晶シリコン太陽電池が設置できない耐荷重性能が低い既存施設向けの出荷を中心に、中長期的にもBAPV向けが大半を占めると予想される。また、自動車・移動体向けも試作・実証が進めば2035年頃には市場拡大につながると予想される。2040年度の国内市場は331億円と予想する。

 フィルム型ペロブスカイト太陽電池は、軽量かつ折り曲げられるため柔軟な設置が可能な点が特徴。現状は大学発ベンチャーや化学系メーカーなどを中心に参入が増加しているが、試験的な少量生産やサンプル出荷に留まっている。建物の屋根や壁面、窓、電気自動車のルーフなどへの搭載を目指す研究開発が進められており、2030年度頃には市場が本格化する見込みという。

 2030年度以降は、印刷技術を応用したロールtoロール方式などの量産手法が整うことで、長期的に市場が大きく拡大すると予想する。2040年度は、BAPVが全体の用途の5割強程度を占めると予測するが、垂直設置型やソーラーカーポート(駐車場型太陽光発電設備)などさまざまな用途も想定する。2040年度の国内市場は106億円と予想する。

 有機薄膜太陽電池は、軽量・薄膜・フレキシブルという特性に加え、吸収波長を適切に制御することでさまざまな色のデバイスを生産できる。現在は、屋内向け製品で一部商用化された事例がある。鉛などを含まない有機材料で製造できるため破損時の安全性から、BAPVのほか営農型などの用途でも注目されている。2030年度頃から市場が本格化し、長期的にはBAPVや建材一体型太陽電池(BIPV)、営農型が市場をけん引し、2040年度の国内市場は12億円と予想する。