FITを利用している太陽光発電所であれば、最低でも20年間を最適に運転させるために、賢いO&Mが求められる。O&Mのコストを予め想定し、 11年目以降に備えよう。
2012年7月の固定価格買取制度(FIT制度)施行から、まもなく10年を迎える。いずれ、FIT終了まで残り10年間となる太陽光発電所も出てくるだろう。願わくば、FITの20年間だけでなく、運転開始21年目以降も収益を生みながらローコストかつクリーンな電気を供給する発電所であってほしい。
そのためには、適切なO&M(オペレーション・アンド・メンテナンス)が欠かせない。
“太陽光発電所はメンテナンスいらず”という神話も今はむかし、O&Mの重要性については、業界に浸透してきたといえるだろう。経済産業省も、制度をこまめに改正し、フェンス設置の義務化など太陽光発電所の健全な運用を促す施策を打ち出してきた。
ここでは、11年目以降のO&Mコストのポイントについて、新エネルギーO&M協議会専務理事の大門敏男氏がSOLAR EXPO ONLINEで講演した内容からご紹介したい。
「新設時にメーカー等が付帯した⾃然災害等の補償は、⻑くても10年満期です。11年⽬から、⽕災保険等の付保が必要になります」(大門氏)。
仮にパワコンが雷害などで停止すれば、相応の復旧コストが求められる。この保険費用が11年目以降のコストとして見越しておかなければならない1つ目だ。
2つ目は、「廃棄費用」。
2021年9月に公表された「廃棄費用積立ガイドライン」によれば、費用を外部機関に積み立てなければならない期間は、以下の通り。
㋐ 原則
- 積立開始 調達期間終了日から遡って10年前の日以降、最初の検針日
- 積立終了 調達期間終了日
㋑ 例外(上記㋐の積立開始日が 2022年6月30日以前に到来する場合)
- 積立開始 2022年7月1日以降、最初の検針日
- 積立終了 調達期間終了日
つまり、運転開始から11年目以降には、廃棄費用を積み立てなければならなくなるというわけだ。そして、その金額は以下の表に記載されている「解体等積立基準額」通り。決して見逃せない金額だということがおわかりいただけるだろう。
<解体等積立基準額>
出典:経済産業省(ソーラージャーナル編集部が一部表現を修正)
パネルに覆いかぶさって発電阻害の大きな要因となる雑草への対策については、草刈りを実施している場合、強草化※によるコストアップが予想される。毎年の草刈りで、年間に必要となる草刈りの実施回数が増え、O&Mコストが高まる、というデータも示されている。大門氏も、「実感として、草刈りを続けることで雑草が強靭になり、草刈り自体が困難になる」という。
※編集部注:雑草が、放置または低頻度の草刈りを継続することで「増え・広がり・変化」し、量的増加・質的悪化(茎が固く背丈の高い雑草に遷移すること)してしまうことを指す。
さて、あなたの所有する太陽光発電所は、運転開始11年目以降にどう備えるだろうか?
まずは大門氏の講演をチェックして、20年以上先を見据えた適切なO&Mをはじめよう!