積水化学がシャープの工場を取得、ペロブスカイト太陽電池を量産

積水化学工業は12月26日、記者会見を開き、ペロブスカイト太陽電池の量産化に向けた体制やスケジュールなどに関して公表した。2025年から既存施設での量産を開始するとともに、シャープの工場を取得し、2027年から年産100MW規模で量産する。

 積水化学は、政府のグリーンイノベーション(GI)基金による支援事業に採択され、フィルム型ペロブスカイト太陽電池の量産技術を開発し、成果を上げている。2025年には、変換効率15%、耐久性10年という仕様により、30㎝幅のロール・ツー・ロール(RtoR)とい手法で現有施設を使って量産を開始するとしていた。

 さらに、今回、大阪府堺市にあるシャープの本社工場や電源設備、冷却設備などを約50億円で取得し、2027年から年産100MW規模での量産を開始することを初めて公表した。同工場への投資総額は約900億円で、シャープからの取得費用のほか、650億円を新たな生産設備に投資する。

 積水化学はGI基金による量産技術の開発事業で、すでに1m幅のRtoRによる生産を実証し始めており、堺市の新工場では、1m幅でのRtoR方式での量産を予定している。

 同社は、2025年1月に、ペロブスカイト太陽電池の生産事業を担当する新会社、積水ソーラーフィルム(大阪市北区)に設立する。同社が86%、日本政策投資銀行が14%を出資し、代表は、積水化学・専務の上脇太氏が務める。

 積水化学では今後、堺の新工場に順次、追加投資を行い、2030年までに年産1GWにまで生産規模を拡大する。政府は、GXサプライチェーン構築支援事業によって、同社に対して年産1GWの量産に向けた投資額の総額3145億円のうち半分となる1572.5億円を補助金として支援することを決めている。

 新会社の積水ソーラーフィルムは、製品設計から製造、販売までを担い、日本政策投資銀行との合弁でスタートするが、今後、営業やマーケティング、施工方法などに関して他社と協業することを想定しており、出資を受け入れる可能性もあるという。GI基金による開発成果を活用し、GXサプライチェーン構築支援事業の対象として量産設備を導入することもあり、オールジャパンの体制を構築したいとしている。

 政府は2024年11月に、「次世代太陽電池戦略」を公表し、主にフィルム型ペロブスカイト太陽電池を屋根上主体に建物に設置するケースを前提に、「2025年度から国内市場を立ち上げ、2040年に約20GWの導入を目指す」とした。積水化学の量産品は、こうした普及戦略の中核を担うことになる。

 2025年に販売し始める製品は、RtoRにより30㎝幅で生産した製品を3段につないで、1m幅のモジュールとして製品化される予定で、初期需要としては公共施設の屋根上や、耐荷重性の問題で結晶シリコン太陽電池が設置でいない屋根上などがターゲットになるという。